ATON COLOR®

2023/SSのATONは、ピンクの豊かなグラデーションの中に、美しいグレーや様々なカラーアイテムが点在しており、まるで春に咲く様々な種類の桜たちのようなカラーパレットです。ここ数年奈良に訪れることが多いなか、『正倉院』に行き、その中に納めされている調度品、楽器、遊戯具など、西域や唐からもたらされた国際色豊かな品々に圧倒されました。

当時、最上とされる品々の材料、石・貝・木などの美しさに強くインスパイアされ、様々なトーンのピンクでコレクションを構成しました。
挿し色のピンクは染井吉野、ブルーはラピスラズリ、奥行きのあるホワイトはユリや真珠、グレーは麻炭で、日本を中心とした世界中の植物や鉱物から抽出された染料をATON COLORのボタニカル染めで再現しました。

PALLETTE_1

PALLETTE_2

PALLETTE_3

PALLETTE_4

PALLETTE_5

PALLETTE_6

BOTANICAL DYE SERIES

サクラ(染井吉野)
SCIENTIFIC NAME | PRUNUS × YEDOENSIS
染井吉野は、母をエドヒガン、父を日本固有種のオオシマザクラの雑種とする自然交雑もしくは人為的な交配で生まれた日本産の栽培品種のサクラ。
NATURAL DYE URAKE | PINK

スミ(麻炭)
SCIENTIFIC NAME | HEMP
麻は植物表皮の内側にある桑繊維または、葉茎などから採取される繊維の総称。狭義の麻と苧麻( からむし)の繊維は日本では広義に麻と呼ばれ、和装の麻織物として古くから重宝されてきた。
NATURAL DYE URAKE | GRAY

ラピスラズリ
SCIENTIFIC NAME | LAPIS LAZURI


ラピスラズリは何世紀もの間、アフガニスタン北部の山脈にある乾燥地帯でのみ採掘され、人類に利用された最古のものとされている。古代から宝石や顔料の原料として珍重され、芸術家からは「海を超えた色」と称され、愛されている。
NATURAL DYE URAKE | BLUE

ユリ
SCIENTIFIC NAME | LILIUM
ユリは日本を原産地とする山百合やテッポウユリ、交配して作られた園芸種としても数多くあり、広く親しまれている。様々なバリエーションを楽しめるユリは夏のお庭を華やかにしてくれる。
50/2 NATURAL DYE ORGANIC | WARM WHITE
48/2 ORGANIC NATURAL DYE | WARM WHITE

ログウッド
SCIENTIFIC NAME | HAEMATOXYLUM CAMPECHIANUM
メキシコや南米が原産のマメ科の常緑高木。邪気を祓うと伝えられ、仏衣の染料にも使用された。黒色の染にも利用され、喪服の染にも用いられる植物。
50/2 NATURAL DYE ORGANIC | BLACK
NATURAL DYE ORGANIC | NAVY
48/2 ORGANIC NATURAL DYE | NAVY / GREEN / CHARCOAL / BLACK

真珠 (アコヤガイ)
SCIENTIFIC NAME | PINCTADA FUCATA MARTENSII
ウグイスガイ目ウグイスガイ科に分類される二枚貝の一種。太平洋とインド洋の熱帯・亜熱帯の海に広く分布し、日本でも房総半島以南に分布する。通常は干潮線帯から水深3メートルくらいまでの岩礁に生息している。
48/2 ORGANIC NATURAL DYE | WHITE

シナモン・ニッケイ
SCIENTIFIC NAME | CINAMOMUM VERUM
世界最古のスパイスともいわれ、漢方の世界では、桂皮という生薬として体を温めたり血行を改善したりするために使用された。日本では飛鳥時代に遣唐使が中国から持ち帰り、桂心という生薬として、貴族の間で使われたとされる。
NATURAL DYE ORGANIC | CAMEL

ATON COLOR®

服作りに関わるすべての工程には、長い時間をかけて培われ、職人達によって受け継がれてきた技術がある。効率化が優先される現代においてはしかし、その技術の素晴らしさは顧みられず、少しずつ失われようとしている。一度失われてしまえば、再生することは叶わない。だからこそ、今も日本に点在する小さなメーカーや工場が持つ技術を残し、伝えたい。そのために私たちは職人とともに仕事をし、新しいアイディアを試し、美しい服を作り続けている。

例えば、染色技術について。天然染料で染められた生地には色の奥行きがあり、私たちがボタニカルカラーと呼ぶ、複雑に折り重ねられたその色は、圧倒的な美しさを湛えて、人間の根源的な感性に訴える力を持っている。

Botanical Dye

自然界に存在する色は、層になっている。その中には、人間の視覚では認識できないものも含まれているが、“見えない色”こそが、美しい奥行きを生み出している。その考え方を天然染色に用いて、20年以上に及ぶ研究の成果として確立したのが、東京・千駄ケ谷にある〈シオンテック〉の創業者・菱川恵介氏だった。たとえ単色であったとしても、色を重ねて表現する。そのために、植物の花、葉、茎、樹皮、果皮、さらに鉱石などの原料がおよそ3000種ストックされている。さらに伊勢神宮内宮の榊や大峰山の笹など、世界中の多様な天然原料から抽出し、染色されたアーカイブは、数万種にも及ぶ。複数回の染色によって同じ色味を表現することは、まったく同じものが存在しない天然原料においては非常に難しい技術だが、〈シオンテック〉には、同じ色味を表現するためのレシピがデータ化されている。

Indigo

本来は県外には持ち出すことができない琉球藍。友禅の職人であった故・吉川慶一氏が沖縄での修行を重ね、初めて琉球藍を京都で染めることが許されたという。水瓶の上に町があると称されるほどの京都の美しい水によって染められるために、その藍は沖縄とはまた違う、モダンささえ感じさせる藍色になる。自然乾燥させた藍の葉を用いて染液を作り、醗酵させる。この工程を職人たちは「藍を建てる」と呼び、「藍の花」と呼ばれる赤みを帯びた泡を合図に、手染めしていく。黄色く染まった生地は酸素との結合によって、藍色へと変化する。その工程を繰り返し、濃度を高め、薄い順に「瓶覗き」「水色」「縹色」「納戸」「藍」「鐵紺」「勝色」など、48通りもの藍色が生み出されていく。吉川氏から受け継がれた技術によって、京都・亀岡では今も職人たちがその手を藍色に染めながら、一枚ずつ琉球藍の美しさを伝えている。

Logwood

かつて黒を表現するための染料は、ログウッドしか存在しなかった。それはナポレオンが纏ったウールのコートの黒であり、この希少なメキシコ産の樹木を取り合って戦争さえ起こったという。ログウッドの黒を、高密度に織り上げたリネンのハリや光沢を保ったまま染め上げるためには、ジッガー染色という原始的な技術で染めるしかない。埼玉県・羽生には140年あまり続くジッガー染色の染工場がある。ローラーに巻きつけたリネンの反物をもうひとつのローラーで巻き取りながら、ログウッドから抽出した染液にくぐらせていく。巻き取り終わったら逆回転させ、再びローラーで巻き取りながら染液にくぐらせる。生地を引っ張りながら染色を行うために、揉み込むような染色方法では得られない、ツヤと光沢が表現される。黒は決して単色ではなく、光の反射によって、多彩な色を放つ黒となる。

Anthurium

熱帯アメリカから西インド諸島にまで分布するアンスリウムには花びらのように蕾を包み込む、仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる赤い葉があり、その赤は、淡くも鮮やかなピンクに生地を染める。肉厚で密度の高いコットン生地の質感を損なわずにスウェットを染めるためには、パドル染色と呼ばれる方法が最適だった。東京・小石川には、およそ110年間パドル染色と呼ばれる技術を伝える染工場があり、まるでスウェットが染液の中を泳ぐようにして染められていく。機械に直接当たることなく、また生地が擦れ合わずに染められるために、質感は保たれたまま。まるで生地から染めたように、縫製箇所にさえ、色むらがない。そして、乾燥機を使わずに自然乾燥させるために、肉厚なコットン生地でありながらも上質さを担保している。